美しい日本……日本人として知っておきたいお話
「ヨーロッパであれアジアであれ、人間としての精神に優劣はないはず」
- 極寒のシベリアを騎馬で横断した日本の軍人(明治25・1892~明治26・1893)
今から120年以上も前に、単身騎馬でユーラシア大陸を横断するという偉業を成し遂げた人がいました。日本陸軍の福島安正中佐です。中佐はドイツの日本大使館に駐在武官として派遣されていた明治25(1892)年、任期を終えて帰国する際にシベリアを横断する計画を上申します。計画は承認され、2月11日に赴任地ドイツの首都ベルリンを騎馬で出発し、翌明治26年6月12日に無事ウラジオストックに到着しました。全行程14,000㎞、1年4ヶ月(488日)という大冒険旅行でした。その間、盜賊が出没する危険な森林地帯や恐ろしいコレラが蔓延する村々を通過し、零下50度にもなる極寒のシベリアを馬で横断しました。
この旅の目的の一つには建設中のシベリア鉄道に関する情報収集もあったのですが、それらは全てロシア政府や清国政府に通告した上で、現地の関係者の協力と支援の下に行われた調査活動でした。正々堂々とした情報収集であって、決して卑怯な手段を用いるスパイ活動ではありませんでした。明治時代の日本政府は、世界を相手にした情報収集活動とともに、情報発信による日本という国に対する世界の評価を重要視していました。中佐の旅の様子は途中の経由地のメディアを通して欧米各国にも伝えられ、人々は驚きと賞賛をもって注目していました。困難な旅を通して、福島中佐は日本人の勇気と忍耐力、礼儀正しさや意志の強さを世界に示したのです。
この前人未踏の快挙は、福島中佐の頑健な身体と不屈の精神力によって初めて可能になったのですが、それに加えて常に前を向き続ける高い目的意識と旺盛な探求心、そして国や家族を守りたいという純粋で優しい気持ちが、この困難な旅を支えていたことを忘れてはならないと思います。それにしても、交通手段や通信機器の発達した今日でさえ、これほどの大冒険をやり遂げるのは難しいのではないかと思います。維新後わずか20数年で世界の情勢をつぶさに見聞し収集しようとした明治時代の人の活力はすごいと改めて驚かされます。安全と平和は周囲から与えられるものと勘違いしてきた現代人として、大いに考えさせられます。
*関連サイト
★『単騎遠征録』を読む
★シベリア単騎横断


